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「センパイー。いい加減自分の部屋に帰ってくださいよー」
「…………」
「もう1時前ですよー?ミーだって眠いんですー」
「だって……部屋に戻ったらベルが来るもん」
ふぅ、とため息をついたフランの横で、あたしは床にうずくまったままもう3時間が経とうとしていた。ベルとは付き合ってる筈だった。大好きな筈だった。だけど心のどこかで、ベルに対する想いに距離を置いてるのに気づいた。確かにあたしは、彼のことが好きだった筈なのに。そんなもやもやした中途半端な気持ちで、ベルに会うわけにはいかない。抱き締められるのも、キスされるわけにもいかない。そう思ってこの3週間、ベルを避けてばかり居たのだ。もちろん彼は怒って、あたしも気まずい想いのまま怒鳴って――――喧嘩。
「知りませんよーセンパイ達の喧嘩なんてー。ミーを巻き込まないで欲しいです」
「ただの喧嘩じゃないも、ん」
「"タダ"じゃないなら何なんですかー。……有料?」
「もう知らない馬鹿フラン!」
今はそんな冗談に付き合ってる暇は無いの!と言い捨ててフランに背を向ける。結局―――あたしのこんな気持ちを分かってくれるのはフランだけだ、とそう思って来たのに。スクアーロに言っても鈍いから全然分かってくれないだろうし、ルッスーリアに言ったって逆に喜びそうだし。ボスやレヴィになんか死んでもこんな話してやらないし。結局頼れるのはフランしか居ないのに。
「ミー知ってますよ、センパイの気持ち」
「……え?」
「ベルセンパイのことー、本当はもう好きじゃないんでしょ?」
―――フランはどうしていつも。興味の無いフリして、実はちゃんとあたしのことを考えてくれてる。可愛くてくっきりとした目が、しゃがみ込んだままのあたしを見下ろしていた。簡単でしょー、と再びフランの声が聞こえる。
「好きじゃなくなった、って言えばいいじゃないですかー」
「い…えないよそんなの。だってベルは同じヴァリアーだよ?そんなの言っちゃえば、気まずくなるに決まってるじゃん……っ。任務にも…支障が出るよ」
それはただ、言う勇気が無いだけってこと。ベルはきっと、元々あたしのことなんかそんなに好きじゃなかっただろう。遊びみたいなものだったんじゃないのかな。――――だってそうじゃなかったら、―――もし本当にあたしのことを好きで居てくれたのなら……今頃とっくに迎えに来てくれてるはず。あたしが逃げ込む場所は此処しかないってことくらい、とうにバレてるから。
「そんなこと言って、本当に部屋に帰らなくていいんですかー?明日の早朝から任務ですよねー。センパイ倒れちゃいますよー」
「だって……。部屋に帰ったらベルが夜這いに来るもん」
「あーそれは困りますー」
へ?困る? きょとんとしたあたしを余所に、フランはしょーがないなーと呟く。あたしの腕を掴んであたしを引っ張り起こすと、そのままベッドの側まで連れて来てその上に座らせた。え、な、何?フラン?戸惑っているあたしを無視して、フランはあたしの目の前にしゃがみ込む。
「ミーがこんなこと言ったら、絶対センパイ困るだろうから黙ってたんですけどー」
「フ…ラン?」
「ベルセンパイのトコー、行かないで下さいー」
「な…んで、フラン?」
「ベルセンパイより、ミーの方が絶対センパイのことを好きな自信がありますー」
きっとこのまま部屋に帰らなければ、ベルとはもう無言で別れることになるだろう。あたしの腕を掴むフラン。この手を離すことは容易い。ベルの元に戻るのも容易い。だけど、フランへの想いが膨らみ行く自分の心を抑えるのは、もうきっと無理だ。
「ベルが…待ってるから、」
「あんな堕王子にセンパイは渡しませんよー。ミーはずっと待ってたんですー」
ずっと、センパイがミーのことを気にしてくれるのを。耳元で聞こえた声はすぐに消えて、ちゅ、と軽やかな音を立ててフランの唇が触れる。ほら、これでベルセンパイの所に帰らなくていい理由ができたでしょー、フランはにこやかに笑った。あたしはうん、と頷いて零れ落ちそうになった涙をぐい、と擦る。
「明日センパイ任務なんですからー早く寝て下さい。ミー下で寝ますからー」
「え、フラン?」
いつの間に準備したのか床には布団が敷かれていて、既にフランの寝息が聞こえていた。(霧の術?) 立ち上がったあたしは、足元に寝るフランの寝顔を覗き込んだ。やっぱり眠かったのか。こんな遅くまで悪かったなぁ……そう思いながら、謝罪の気持ちと膨らんでくる自分の想いを込めて、眠る彼の頬にそっとキスを落とした。
「おやすみ、フラン」
ベッドに広がるフランの香り。明日はきっと、フランの声で目が覚める。
そしたら力いっぱい抱き締めてやろう。センパイを恋に落とすなんて生意気なコーハイ!
死んでも
放してなんてやらない
きっと、放したくても放せなくなることは分かってる
Love Frog様に提出です!
初のフランでドキドキ…。可愛いですねフラン!
参加できて本当に楽しかったです。有難う御座いました。
090904 瑠依
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